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執筆者の写真Yasushi Noro

『「プチ・ニコラ」大全』(14)

Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, pp.124-p.129.


「最初のお話」(la première nouvelle)

 

 いよいよ,文章版『プチ・ニコラ』が始まりました.初回は『シュッド・ウェスト・ディマンシュ』誌1959年3月29日に一面いっぱいを使って掲載されています.これは(212)で扱ったお話ですので,内容はそちらを参照していただくとして,以下では,その他の情報について紹介しておきます.




 本書pp.126-129には4ページにわたって,本話のためにゴシニが書いたタイプ打ち原稿が掲載されています.著者も記している通り,一つの削除も,一語の修正もない,完璧な清書原稿です.文章の本文は雑誌に掲載された文と変わりません.しかし,以下で掲載時の紙面の写真を転載しますが,2点だけ異なる箇所があります.まずは題名.タイプ原稿には題名がついていませんが,掲載時には「サンペの復活祭」というカラフルな題名が付されています.サンペとゴシニの,ではないの?と思うのですが,この疑問に答えるのが,原稿との相違箇所の2番目.原稿には文末に「ニコラ」と署名されているだけですが,雑誌には「ニコラ.ルネ・ゴシニの原稿に一致す」とされ,ニコラが書いたのだけれど,ゴシニが書いたものと同じですよ,とコピーライトへの配慮がなされているのです.ちなみにP.C.C.はPour Copie Conformeの略号で,「(àに)符号,一致したコピー(写本)」の意味です.「本ドラマは実話に基づくフィクションで,登場人物は実在の人物とは無関係で・・・」とはよく見かける,あくまで創作であることを強調する表示ですが,この場合は逆に,「本話はフィクションのようですが,ニコラが語る実話です」と,創作でありながら,実際に子どもが語ったお話のように見せかけていることになります.


 (212)で紹介したお話*は,『未刊行集』第3巻に収録された際に,文章のところどころにイラストが白黒で挿入されていました.

*« L'œuf de Pâques », Le Petit Nicolas Le ballon et autres histoires inédites, IMAV éditions, 2009, pp.23-31.

 ですから,上↑のような掲載時の一面を見ると,色がついていて,やはり違った印象を受けます.それもお話に繰り込まれたエピソードの一つを読めば,先に挙げたイラスト,そして紙面上左上の階段の場面がカラフルに彩られているのは当たり前.すっごく雰囲気が出ています.この場面には色が欠かせません.ちなみに(212)-3で紹介した場面,子どもたちが全員,チョコレートの食べ過ぎで気分が悪くなってしまうあの場面ですが,ちょっと見にくいのですが,紙面↑の右上では,子どもたち全員の顔が薄い緑色に塗られていて,如何にも気持ち悪そうです.色の力は偉大だ.

 紙面は縦60x横42ですから,結構大きいですね.イラストが7枚付されています.イラストの周りにはチョコレートを頬張っているニコラが配され,枠を作っていますから,読者は確かに「サンペの」という印象を受けたでしょう.まるで文章が挿入されたイラストといった趣です.

 本書の解説では,他に,これが第一話であるため,その後の『プチ・ニコラ』との相違点が縷々並べられています.ニコラは未だ小学生ではない,不器用なパパや隣人ブレデュールさんがすでに登場している,登場するのは「近所の」子どもたちで,「クラスメート」ではない,アルセストが出てくるけれど,「いつも何か口にしているデブ」とはちょっと違う,ジョゼフはこれ以降登場することはない,ママンも登場するが・・・などなど.これまでの『プチ・ニコラ』像との違いを見つけるのも一つの楽しみかもしれません.でも,この初出時の読者は,後の連載のことなんて未だ知る由もない,なんて当たり前なので,全く異なる印象と興味を持って楽しんだはずです.

 このお話から3ヶ月後の1959年6月7日から,いよいよ連載が始まります.週一回,毎週日曜日.1964年まで222話のお話が掲載されました.ニコラはよほどのストーリーテラーと言えるでしょう.その間添えられたイラストはほぼ600枚.すでに1回目のお話から,読者の反応は上々だったようです.



「復活祭をネタに話を書くのはすごく大変だよ.だっていつも,卵だ,鐘だ,うさぎだ,ばかりになってしまうからね.」(ゴシニ)(p.124)


「僕には技術がなかったからね.ルネの文がなかったら,ああはできなかっただろうね.」(サンペ)(id.)


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