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執筆者の写真Yasushi Noro

『「プチ・ニコラ」大全』(12)

更新日:2023年6月21日

Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, pp.118-p.121.


p.118は第4章「『プチ・ニコラ』,最初の一歩」と第5章「超ナイスなクラスメートたち」の間奏曲のような1ページです.作者の言葉が引用されています.


「『プチ・ニコラ』の物語を読んだ人なら誰でも,自分をニコラになぞらえるんだ.」(ジャン-ジャック・サンペ)


「子どもはニコラになりきるし,親は子ども時代を想い出すんだろうね.」(ルネ・ゴシニ)



 p.119からは新章の始まりです.


第5章「超ナイスなクラスメートたち」

 「ナイスな」はニコラの口癖であるchouetteという単語です.人にも物にも使われますが,名詞につけたりするのはややイレギュラー.だから(8)の題名« le chouette bouquet »なんて言葉遣いには,子どもっぽさとか幼稚さ,たどたどしさなど,特別なニュアンスが生じる仕掛けです.辞書的に訳すと,「たくさんの良い友だち」ですが,もう少し,子ども特有の遠慮のなさと親近感を出したいと考えました.ま,それはともかく.


「カフェ・ドゥ・ラ・ペでの打ち合わせ」(Rendez-vous au café de la paix)

 1959年春に,ゴシニとサンペはパリのオペラ広場に面したカフェ・ドゥ・ラ・ぺで,『シュッド・ウェスト・ディマンシュ』誌のアンリ・アムルー編集長に会います.『シュッド・ウェスト・ディマンシュ』誌は成人向けの情報誌で,フランス内外の政治にも大きな紙面を割いていた地方誌の一つです.アムルー氏は日曜版でBDやイラストの割合を増やそうとしているところでした.サンペはすでに1950年代の初頭から同誌にイラストを掲載していた関係で,アムルー氏とは知り合いでした.またアムルー氏はゴシニが執筆し,ユデルゾがイラストをつけていた推理物を読み,ゴシニを高く評価していたと言います.


「その年の5月,私たちはテラス席に陣取り,ゴシニに,サンペと一緒に何かお話を作らないかと提案したんだ」*,とアムルーは回想している.二人の作者は白紙委任を受け,仕事を開始した.ゴシニはには考えがあった.何とかして,あの少年を甦らせたい.それでゴシニは,マンガをやめて,数枚のイラストを挿入した文章にすることに決めた.サンペはすぐさま,それは面白い!と賛成した.」(p.121)

*Goscinny, Marie-Ange Guillaume et José-Louis Bocquet, éd., Actes Sud, 1997に引用された発言.


「僕はルネのテクストなら,以前から幾つも読んでいた.それでも,ルネが何の制約もなく自由に書いた最初のテクスト,それが『プチ・ニコラ』なんだよ.」**サンペはそう回想している.

**Goscinny et moi, José-Louis Bocquet, éd. Flammarion, 2007からの引用.


「ルネが最初のお話を手にやってきた.話というのが,子どもの一人,つまりニコラが友だちとの日常生活について語る.その友だちがみんながみんな,変な名前をしてるんだ.リュフュスだの,アルセストだの,メクサン,アニャン,クロテール・・・生徒監なんて「ブイヨン」,つまりだし汁だよ.」(id.)


 変な名前を見て驚いたサンペは,思わず,「何なんだ,この名前は?」と質問したそうですが,ゴシニは「何となくね」(« c'est comme ça. »)と即答.サンペもそれ以上は聞きませんでした.


「よし,始まりだ!もうルネが形式を決めてきたんだから.ルネは何から何まで創り出した.(略)すべてが整っていて,驚きだよ」***,とサンペ.(id.)

***« Goscinny », Les Inrockuptibles, hors-série, octobre, 1997からの引用.


「僕はサンペにもう一度ニコラでいこうって提案したんだ.ただし,イラストを入れたお話(récit)でってね.ニコラを語り手にして,それで子どもが使うような言葉をつくりだす.そんなオリジナルな文体を使ってってね.」(ゴシニ)(id.)


 二人の話はどんどん進み,いよいよ『シュッド・ウェスト』誌に予告が掲載されました.




「あのおじい様さえ・・・おじい様,ほんとは報道にしか興味ないんだけど,なのに『プチ・ニコラの冒険』読んでるよ・・・」(id.)

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