« Deux hommes(Goscinny et Sempé) au Salon des arts ménagers », Sud-Ouest, 13 mars 1960.
Aymar du Chatenet, La Grande histoire du Petit Nicolas Les Archives inédites de Goscinny et Sempé, IMAV éditions, 2022, p.152より.
ゴシニとサンペは同じ組み合わせで,『プチ・ニコラ』以外の作品を書いています.前回で説明したように,今回からは『プチ・ニコラ』番外編の1つを読んでゆきたいと思います.『大全』以前には,これまでどこにも再録されたことはなさそうですので,できる限り原文も合わせて紹介します.唯,あまりに細かい字で印刷されているので(『大全』(24)に全体を掲載していますので参照してください),ちゃんと読み取れるかどうか.目がしょぼしょぼする・・・.
*
Je déjenais paisiblement chez mes amis Sempé quand, à la fin d'un repas fort réussi, ma foi, car j'aime bien la viande trop cuite, Mme Sempé nous servit le café.
« Imbuvable! hurla Sempé.
— Imbuvable, mon café ? cria Mme Sempé. Il est très bon, mon café!
— C'est de l'eau de vaisselle, et de la mauvaise encore !
— Pas si mauvaise, dis-je, la... »
Mais on ne me laissa pas terminer. Il y eut des remarques regrettables de part et d'autre, que j'esseyai de tempérer par une habile disgression :
« Peut-être que cette cafetière, d'un modèle, disons... ancien... »
Là encore, je fus interrompu, on ne me laisse jamais finir mes phrases chez les Sempé.
« Ma mère se sert d'une cafetière identique à celle-là ! rugit Mme Sempé.
— On ne parle pas de ta mère, on parle du café !
— Eh bien ! au lieu de t'attaquer à ma pauvre mère, tu ferais bien de m'acheter une autre cafetière !
— Tu rigoles ! » dit Sempé.
Il y eut encore quelques paroles d'échanges, où il fut reproché à mon ami Sempé, entre autres choses, d'amener n'importe qui à la maison sans prévenir, de pique-assiettes qui, par-dessus le marché, se permettent de faire des remarques désagréables sur les cafetières et les mères. Je m'aperçus que l'heure avançait et je pris congé.
« Croyez, chère amie, je dis que... »
Mais la porte me fut claquée au nez, ce qui m'empêcha de terminer une phrase agréablement tournée. L'après-midi même, je reçus un coup de téléphone de Sempé.
« Par ta faute, me dit-il, il faut que j'aille acheter une cafetière pour Christine; alors, tu vas m'accompagner !
— Mais je...
— Ne discute pas ! Rendez-vous dans une heure au Salon des Arts ménagers !
— Au Salon...
— Parfaitement, au Salon des Arts ménagers. Je ne suis pas de ceux qui achètent bêtement n'importe quelle cafetière. Puisque le Salon est ouvert, je veux voir ce qui se fait de mieux !
— Tu penses que...
— Discute plus ! Dans une heure, devant la porte principale du Grand-Palais. Et soit là; sinon, tu peux te chercher un autre gars pour illustrer tes textes ridicules. A tout à l'heure !
— Non, mais... »
Je ne pus continuer. Sempé avait déjà raccroché son récepteur. La dernière menace m'avait fait sourir. Sempé a toujours l'air de croire que mes textes, pour avoir du succès, ont besoin de ses petites griffonages. Crotesque !(p.152)
ふぅ.仕事以外で,久しぶりに長文を打ちました.間違えてないかなぁ.そんなことがあったら,仕事より大変(かも?).ともかくも,これが家電市に行かざるを得なくなった発端でした.というより,前回もう既に,p.153の著者の説明を紹介した際に,『シュッド・ウェスト』の編集長からの依頼には触れておいたので,上のような顛末は二人のお遊びの説明,つまり純粋に創作であったことがわかります.だって,いくらサンペが口が悪くたって(本当に悪いかどうかは知りません),コーヒーを入れてくれた奥さんにこんな罵倒はしないでしょう.論点はズレまくっていくし,いくら勢いとはいったって,サンペがゴシニの文章の悪口を言ったり,ゴシニが呼ばれもしないのに顔を出して,ただで飯を食べて帰る図々しい人のように扱われたり・・・.ないない.そんなことあり得ません.でも,お話としては面白い.それも,あるかも?!と思わせてしまう.さすがに,ゴシニとサンペです.
いずれにせよ,相変わらずのユーモアを追ってみましょうか.
まず,ゴシニはサンペの家で「ゆったりと」,一緒に昼食を食べていた.「とても美味しかった食事の終わりに」と,未だ2行目ですが,この辺から不穏な空気が流れ始めます.なぜなら「とっても美味しかった食事」(un repas fort réussi)は,文字通りには,「大成功した食事」なのですが,なぜ成功と言えるのか,直後のゴシニの説明を読むと・・・「なぜなら,僕は火の通りすぎたお肉が好きだから」.つまり,もうこの時点で既にゴシニは,焼き具合に失敗して,黒焦げ?のお肉が出てきたと皮肉を書いているのです.でも,きっと,ヤケすぎだよ,なんて,言わなかったんでしょうね,礼儀正しいゴシニは.というわけで,ここは,みんなスルー.
食後にサンペ夫人がコーヒーを入れてくれます.するとサンペが「飲めたもんじゃない!」,と叫び声を上げます.よほど不味かったのか?!それにしても,それをそのまま言葉にするなんて・・・.すると夫人が,「飲めたもんじゃない,ですって?私のコーヒーが?すっごく美味しいわよ,私の入れるコーヒーは.」,と「大声で」返します.事実を認める前に,やり返すタイプですな.するとサンペがエスカレート.「水っぽいんだ!」.ところが,ここで「水っぽい」はフランス語では« de l'eau de vaisselle ».文字通りには,「食器を洗った後の水」,となります.さらにサンペは付け加えて,「それも汚れた水だ」.
幾らなんでもそれは・・・と思ったのは,読者の私だけではなく,ゴシニが二人を宥めようと,「そんなには汚れてないけどね,その水・・・」と言いかけたところで,二人の罵り合いに中断され,仕方なく,話題を変えて,やっぱり「宥めようと」しますが・・・.「たぶん,コーヒーメーカーがね,そのう,型が古くてさ・・・」またもや,遮られてしまいます.「サンペの家にいると,いつでも終わりまで言わせてもらえないんだ.」
奥さんを傷つけまいと,古いコーヒーメーカーのせいにしたゴシニでしたが(コーヒーメーカーだったら,古くても味変わらんだろ),ケンカはさらにヒートアップ.思わぬ方向に進んでゆきます.
「私のお母さんだって,これとまったく同じ機種を使っているのよ!」,と激昂するサンペ夫人.
「いやいや,お母さんの話じゃなくてさ,コーヒーの話なんだって!」
「そうだったわね.それなら,可哀想に,私のお母さんに矛先を向けるんじゃなくて,別のコーヒーメーカーを買ってくれればいいでしょ!」
「冗談じゃない!」,とサンペ.(p.152)
売り言葉に買い言葉.さらに言い争いを続けていくうちに,非難はまたもや思わぬ方向へ.「色々言われていたが,中でもサンペは,「断りもせずに家に誰でも彼でも連れてきちゃって.おまけに,タダ飯喰いのくせに,コーヒーメーカーだの母親だの,こっちが聞きたくないようなことをのたまっても平気なツラをしてるような人を」.さすがに,これはまずいと思ったか,ゴシニが暇乞いをします.やり返さなかったのがえらい.でも,帰り際,「バタンと,目の前でドアを閉められてしまい,御愛想の一言も」言わせてもらえませんでした.だって,「サンペの家にいると・・・」ですから.
ここまで読んで,ゴシニはえらい災難だなぁと思っていると(でも,ゴシニも内心では,焼きすぎたお肉が好き,なんて嫌味を呟いていたんですから,確信犯でもあったのですが),その日の午後にはサンペから電話がかかってきて,さらに怒鳴られます.
「君のせいで,クリスチーヌのためにコーヒーメーカーを買いに行かなきゃならないんだ.付き合えよな!」
「でも,僕は・・・」
「クドクド言うな.1時間後に家電市な!」
「市って・・・」
「サンペの家」にいなくても,最後までは言わせてもらえないようです.
「それじゃあ君は・・・」
「もうクドクド言うな.1時間後に,グラン・パレの出入り口だ.そこにいろよ.もしいなかったら,お前の駄文にイラストをつけるやつを,別に探す事になるからな.じゃ,あとでな.」〔ガチャン,ツーツーツー・・・〕「いや,でも・・・」
要するに,サンペの家でも家でなくても,ゴシニはサンペにもサンペの奥さんにもしてやられてしまう役回りのようです.声の大きい者の意見が通るのは,世界中,どこでも同じ.況んや,怒りまくっている人相手に,何ができるというのでしょう.
でも,やっぱり内心では,ほんの少〜しだけ,復讐してゴシニは溜飲を下げるのでした.
最後の脅し文句には笑ってしまった.サンペはいつだって,さっと描いた,やつの殴り書きみたいなイラストがついているから,私の書くものが成功しているんだと,思っている節がある.あわれなやつさ.(id.)
正面切って最後まで言わせてもらえないからこそ,二人の仲は続いているのかも.
さて,次はいよいよ大混雑の「家電市」へ.
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