ロモ先生の御講演について
通常のカフェ・フランセでは第1学期と第3学期の初回に今後のテーマの希望を出してもらい,参加者の関心に応じて半年分のテーマを決定しています.そこで昨日(7月12日(木))のテーマは既に「ヴァカンスが待ち遠しい!」に決まっていたのですが,本学文学部の萩原先生の御仲介で,急遽ストラスブール大学から来日されているロモ先生(LOMO MYAZHIOM Aggee Celestin (APS)が研究と出身地のカメルーンについてご紹介下さることになりました.御講演はフランス語で行われ,萩原先生が通訳をしてくださいました.急なお話であったにもかかわらず,紹介用のパワーポイントのファイルを作成してくださったロモ先生,事前の準備がほとんどないまま通訳をしてくださった萩原先生には感謝の言葉もありません.
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さて,ロモ先生の御講演ではまずは,先生のご専門についての話から始まりました.1990年にカメルーン大学を卒業された後,ストラスブール第2大学でDEAと修士号を取得され研究の道に入られました.1996年には同大で博士号を取得されました.そのときのテーマは「植民地アフリカの社会,権力,宗教」です.元々は歴史研究者として20−21世紀のヨーロッパとアフリカの関係史を研究されていたそうですが,後に研究領域はマイノリティ,障がい者の社会参加,病理学とその対策をめぐるポリティック(政策)などに広がっていったそうです.
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カメルーンの地理と歴史,特に19世紀末の普仏戦争後にフランス,ドイツの関係性の変化の影響を,植民地であったカメルーンはダイレクトに反映します.カメルーンの地理,領土と勢力圏形成のお話に,われわれが教科書で習う世界史が如何に表層上の大国の歴史に偏っているか,反省を求められているようでした.ドイツ,フランスの関係が変われば,両国が占領している植民地の地図も変わる.それにより,占領されている地域の意志の有無に関わらず,地域は分断され,地図が塗り替えられる.考えてみれば当然のことではあるのですが,大国の争いが地理的にも時間的にも離れた地域に作用するというダイナミズムがよく理解できました.
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さらにカメルーンの現在の(直近の)問題として,チャド湖付近におけるボコ・ハラムというイスラム原理主義の割拠,そして北西部の英語圏(それも植民地支配の結果の一つのはずです)の独立の機運がヨーロッパの政治に<直接的に>及ぼす影響についてのお話もありました.先日もフランスの外務副大臣がこの地域で襲撃にあうという事件があったそうですが,それは英語圏とフランス語圏の(歴史的には植民地支配の産物である)内部対立を表すだけではありません.副大臣が襲撃されたという事実の背後には,そもそもフランスの副大臣がこの地に赴く理由があったわけで,この別の事実にこそ,カメルーンの内部対立として消化してしまうことのできない,世界規模の利権と関係性が表れているわけです.
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その他にも,中国(その他の国々)のカメルーンにおける利権問題,HIV感染に関する対策,「バカ」(「ピグミー」)についての紹介,食文化など,ほんとうに多岐に渡る有益なお話をたくさん御伺いできました.ボルドーからの留学生,留学修了生の参加もあり,活発な議論が交わされました.
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岡山大学の日本人学生は留学生が周りにいて,フランス語を母語とするネイティヴ教員がいて,フランスやフランス語圏に関する講演,場合によってはフランス語による講演会が開かれ,毎週のカフェでフランス語を話すことも聞くこともできる.これはずいぶんと恵まれた,お得な状況ではないでしょうか.そんなことを考えながら,講演会に耳を傾けていました.
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以下に,ロモ先生が用意されたファイルの抜粋を紹介します(抜粋をご快諾下さったロモ先生に感謝します).