ブレナ氏の講演について・・・あとがき
昨晩は高梁市役所で国際交流員として働くエドゥアール・ブレナ氏をお迎えしてお話をお伺いしました.
ブレナ氏は「日本の地方から日仏友好を強化する」という題名で,国際協力員として,フランス人として,日本の一地方で何をしてきたか,何ができるか,そして日本でどのようなことを学んだかなど,複数の観点から観察と経験,そして展望についてお話ししてくださいました.「この数字で日仏友好関係が分かる!」と,まずは数値から日仏の関係に触れた後,自身が申請されたプログラムの説明(留学生にはとても大切な情報ですね),高梁市の使者(chauviniste(?))として高梁市の紹介へと進みます.観光スポットの描写,PRヴィデオの映写など(高梁のお祭りを撮影したPVは賞まで受賞しているそうです),岡山人でも知らないような情報満載のお話でした.また,高梁市での文化交流として,お料理教室(レモンタルト,美味しそうねぇ),フランス語映画の上映会(ジョルジュ・フランジュの『顔のない眼』・・・ちょっとコアすぎない???),出張授業,英文学の講読など,興味深い実例を挙げられました.講演後も聴衆の興味とニーズに応じて質疑応答,...というよりカフェを手にした気らくな談話を楽しみました.高梁でフランスの料理は食べられるの?,(個人的なことだけど)フランス帰ったらどんな仕事するの?などなど.面白い「蒟蒻」屋さんがあるなんて耳寄りな情報提供も.
私の印象に残ったのは,文化交流の過程で,フランスといえば・・・という日本人一般が持つイメージから,ブレナ氏に様々な要請が寄せられることがあるというお話でした.最初はそんな,いわば「おふらんす」的なものを求められるとは思っていなかったブレナ氏も,そうした要望,要請に応えるように,フランス人として何ができるか考え始めたようです.文化交流とはいえ,それぞれのナショナリズムを背景にした純粋無垢な文化なるものがあってそれを相互に受け入れたり拒否したり・・・ということはありません.(ブレナ氏にとって)わたしたち受け入れ側は既に常に先入見を持って「フランス」人と接していますし,フランス人も場合によっては,そうした偏見(ステレオタイプ)に応えようと,フランスを代表したり演じたりして「フランス」を見せようとします.そんな中からフランス的なもの,日本的なものが現れてくるのですが,こうしてお話をして思うのは,結局のところ,そうした相互のイメージの先には,個人と個人の関係があるということではないでしょうか.フランス人だからとか,フランス語で意思疎通をしなければ,というような要請ではなく(それがお勉強として大変意義のあることであるのは確かですが),相手を想いつつどのように相手を受け入れ,対話し,関係性を築くかを意識する必要があります.これはこれから留学する日本人学生にとって,とてもとても大切なことです.単に語学習得ができれば良い,海外生活をすることで自分が磨ければ良い,というのでは自己満足を一歩も出ず,前述のようなステレオタイプ(思い込み)を確認するだけで終わってしまいます.それでは,時間もお金も賭けるのにもったいない.相互のイメージを絶えず更新しようと務めながら,触れ合う人も自分も変化する文化交流の醍醐味を実感できたら,それはそれは素晴らしい体験となるでしょう.
ところで高梁市は,パリに次ぐフランス第2の都市であるリオン市(Lyon)の高校(lycée)と協定を結ぶことになっているそうで,実現すれば,来年度以降相互に留学生の交換・派遣があるそうです.3年越しのプロジェクトだそうですから,是非実現してほしいものです.実現の暁には,本学にも遊びにきてもらいましょう!(野呂)